食品用パウチ、平袋、ロールフィルム、アルミ袋などを中国から調達する日本企業は少なくありません。中国には設備、生産能力、材料調達力、価格競争力に優れた包装工場が多数あります。
一方、国内調達と同じ感覚で発注すると、量産後に思わぬ品質トラブルが発生することがあります。その原因は、必ずしも「中国工場の技術力が低い」からではありません。
実務上は、次のような認識差が大きな問題になります。
- 日本側が当然と考える品質基準を工場側が共有していない
- 図面や仕様書に書かれていない要求が多い
- サンプル確認時と量産時の管理条件が異なる
- 夜勤、外注工程、担当者交代などの変化が管理されていない
- 出荷前検品の方法と合否基準が曖昧である
海外調達では、工場を見つけることよりも、日本側の品質要求を言語化し、工場と共有し、量産工程で再現できる状態にすることが重要です。
本記事では、当社が実際に経験した二つの事例をもとに、中国から食品包装資材を調達する際に起こりやすいトラブルと、その予防方法を整理します。
1. 食品包装の海外調達では「仕様」だけでは足りない
一般的な見積依頼では、袋の幅と長さ、厚み、材質、印刷色数、数量、納品先などが提示されます。しかし、食品包装の品質を安定させるには、これだけでは不十分です。
同じPE袋でも、食品に直接触れるのか、冷凍・冷蔵・常温のどれで使うのか、内容物に油分や酸があるのか、自動包装機で使うのかによって必要条件は異なります。
海外調達における「仕様」とは、寸法と材質だけではありません。使用条件、許容範囲、検査方法、不良判定基準まで含めて初めて量産可能な仕様になります。
2. 実例①:袋の角加工で発生した樹脂片の残留
当社が過去に確認した案件では、袋の角を丸く仕上げるため、中国工場が角落とし加工を行っていました。外観上は問題なく、袋自体も指定寸法どおりでしたが、一部の袋に小さな樹脂片が残っていました。
食品包装では、このような微細な樹脂片も軽視できません。袋の外側に付着していたとしても、充填工程や開封時に食品へ混入する可能性を否定できないためです。
日本で約3,000枚を再検品
商品はすでに日本へ到着していたため、当社側で約3,000枚を一枚ずつ確認しました。問題品を除外できましたが、本来は量産前または中国出荷前に防止すべきトラブルです。
原因を確認すると、工場は袋の角を一枚ずつ切り落とす加工方法を採用していました。切断時に発生した小さな樹脂片が、静電気などによって袋に残留していたと考えられます。
加工方法を枠抜きへ変更
その後、角部分を個別に切り落とす方法から、刃型を用いて外周を一括で抜く方法へ変更しました。これにより、細かな切りくずが残るリスクを低減できました。
ここで重要なのは、工場に袋を製造する能力がなかったわけではないという点です。日本側が求める「食品包装として異物混入リスクを抑える」という品質基準が、加工方法の選定段階まで十分に共有されていませんでした。
この事例から、完成品の形状だけでなく、切断方法、端部処理、加工くずの除去、静電気対策、作業環境、出荷前の異物確認方法まで確認する必要があると分かります。
3. 実例②:スタンドパウチのチャックが逆向きに取り付けられた
別の案件では、スタンドパウチのチャック部分に不具合が発生しました。袋を正面側から開けようとしても開きにくく、反対側からは簡単に開いてしまう構造でした。
調査の結果、夜勤の作業者がチャック部材を逆向きに取り付けていたことが分かりました。しかも、問題品は工場検査を通過し、日本まで到着していました。
「作業者のミス」で終わらせてはいけない
人は間違えることがあります。重要なのは、間違いが起きても次の工程で発見できる仕組みがあるかどうかです。
- 部材の向きを識別できる作業標準があったか
- 正しい状態の見本が作業場所にあったか
- 初品確認が行われたか
- 夜勤責任者が確認したか
- 工程内検査が機能したか
- 開閉確認を出荷検査に含めていたか
- ロットごとの記録が残っていたか
チャックを逆向きに取り付けたことは直接原因です。しかし、量産され、検査を通過し、出荷されたことまで考えると、本質的な原因は品質管理システムが機能していなかったことにあります。
サンプルが正しくても量産品が正しいとは限らない
サンプル確認時には経験のある担当者が作業していても、量産では別設備、別作業者、夜勤、外注工程、高速生産、材料ロット変更などが起こります。
したがって、サンプル確認と量産管理は分けて考える必要があります。
4. 工場選定では価格と設備だけを見ない
設備が新しいことと、日本向け品質管理ができることは同じではありません。工場選定では、次の管理体制も確認する必要があります。
- 品質管理部門が独立しているか
- 作業標準書が現場で運用されているか
- 初品確認が記録されているか
- 検査数量、頻度、方法、合否基準が具体的か
- 不具合発生時に原因分析と再発防止ができるか
- 外注工程も含めて管理できているか
「出荷前に検査します」という説明だけでは不十分です。何を、何枚、どの方法で、誰が確認し、どの状態を不良とするのかまで明確にする必要があります。
5. 初めて中国から調達する企業に確認したいこと
当社では、新規相談を受けた際、最初に次の点を確認します。
- 中国から包装資材を調達した経験があるか
- これまで国内で同じ資材を購入していたか
- 過去に品質トラブルがあったか
- 現在の包装で困っていることは何か
海外調達経験がない場合は、すぐに見積依頼を出すのではなく、内容物、保存条件、バリア性、充填方法、使用方法、輸送条件を整理します。
そのうえで、材料構成、厚み、袋形状、加工方法、検査項目を決定します。
6. 推奨する調達フロー
- 使用条件の整理
- 仕様書の作成
- 工場選定
- サンプル確認
- 量産リスクの確認
- 最終仕様・承認サンプル・検査基準の確定
- 生産中の進捗確認
- 出荷前検査
- 輸入・納品後の記録と改善
海外調達の品質は、最後の検品だけでは作れません。量産前の設計と共有が重要です。
7. 量産前チェックリスト
製品仕様
- □ 幅、長さ、底マチ、シール幅が確定している
- □ 寸法公差が明記されている
- □ 材料構成と各層の厚みが確認されている
- □ 総厚みと許容差が明記されている
- □ 内容物との適合性を確認している
- □ 保存温度と使用温度を確認している
- □ 必要なバリア性能を確認している
加工
- □ チャック、ノッチ、角丸、穴位置が図面化されている
- □ 部材の向きが明確である
- □ 切断くずや加工くずの除去方法が決まっている
- □ ヒートシール条件が確認されている
- □ シール幅とシール強度の基準がある
- □ 外注工程の有無を確認している
印刷・検査
- □ 最終版下データが確定している
- □ 表裏、上下、印刷位置が明確である
- □ 食品表示内容について最終承認を得ている
- □ 異物、外観、寸法、漏れ、開閉性の基準がある
- □ 抜取数量と検査頻度が決まっている
- □ 不良品を隔離する仕組みがある
- □ 検査記録を保存することになっている
梱包・輸送
- □ 内袋、外箱、数量表示が決まっている
- □ 変形、圧迫、湿気への対策がある
- □ ロット表示と追跡方法が決まっている
- □ 出荷前写真または検品報告の条件が決まっている
8. 品質管理は注意喚起ではなく仕組みで行う
「樹脂片を残さないでください」という指示だけでは、完成品を目視するだけで終わるかもしれません。
一方、「食品への異物混入リスクがあるため、加工くずが発生しにくい工法を選び、工程内で除去し、出荷前に確認する」と説明すれば、加工方法そのものを見直せます。
また、「チャックの向きを間違えないでください」という注意だけでは、作業者の注意力に依存します。正しい見本、初品確認、工程内検査、開閉検査を設定する方が有効です。
品質管理は、注意喚起ではなく仕組みで行う必要があります。
9. 株式会社康程優創の考え方
当社は、中国工場を紹介するだけの業務を目指していません。
- 使用条件と顧客要求の整理
- 日本側品質基準の言語化
- 工場への仕様伝達
- サンプル確認
- 量産前リスクの洗い出し
- 生産進捗と品質情報の確認
- 出荷前検品の調整
- 輸入、納品後の改善管理
中国工場のコスト、設備、生産能力を日本市場で生かすためには、日本側の品質要求を明確にし、工場が再現可能な製造条件へ落とし込む役割が必要です。
まとめ
中国から食品包装資材を調達する際に発生するトラブルの多くは、単純な技術不足ではなく、品質基準と管理方法の認識差から生じます。
今回の二つの事例も、工場に製造能力がなかったことが本質ではありません。
- 角加工後の樹脂片を食品包装上の異物リスクとして管理できていなかった
- チャックの逆付けを工程内または出荷前に発見する仕組みがなかった
量産前に、使用条件、品質基準、検査方法、不良判定、変更管理を明確にし、工場と共有することが重要です。
株式会社康程優創では、食品用軟包装を中心に、中国工場の選定、仕様整理、サンプル確認、量産管理、輸入調整まで支援しています。
食品包装資材・中国調達について
食品用軟包装の仕様整理、工場選定、サンプル確認、量産前チェック、出荷前検品まで、現在整理できている範囲からご相談いただけます。
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