中国工場から、現在より約20%安い見積が出てきた。

仕様も大きく変わらず、納期にも問題がなさそうだ。

それなら、仕入先を切り替えるべきでしょうか。

私自身、中国からの調達を始めた頃であれば、「20%下がるなら検討する価値がある」と考えていたと思います。

仕入価格をできるだけ下げ、利益を確保し、予定通り納品する。

当時は、価格を非常に重視していました。

しかし、原材料、包装資材、プラスチック製品、雑貨などを中国から6年以上調達する中で、判断の仕方は少しずつ変わりました。

今は、工場から安い見積が出てきても、まず考えることがあります。

「この価格と条件で、求められているものを本当に安定して作れるのか」

工場価格が安いことと、調達全体のコストが低いことは、必ずしも同じではないからです。

約20%安い仕入先に切り替えた後に起きたこと

ある雑貨製品を中国から調達したときのことです。

以前から取り扱っていた製品でしたが、再発注の際、為替や製造コストなどの条件が変わり、それまでの仕入先では価格が合わなくなっていました。

そこで新しい調達先を探し、従来と比べて仕入価格を約20%下げられるルートを選びました。

中国側には検品業務を行っている協力先もあり、製品自体も比較的シンプルだったため、私たちも「大きな問題は起きないだろう」と考えていました。

ところが、商品が日本に到着し、分装作業を始めたところ、印刷不良やインクによる汚れなどが多数見つかりました。

日本国内で改めて確認したところ、初期段階では約15%の商品に何らかの不具合が見つかりました。

その後、個包装を開封し、選別し、修正できるものは手直ししましたが、それでも使用できない商品が残りました。

中国工場は、不良となった数量について無償で補充することには応じました。

しかし、ここで終わりではありません。

日本での再検品、開封、選別、修正。

再納品に向けた調整。

そして、それらに対応する人の時間。

こうしたコストは、工場が不良品を補充しても消えません。

実際、この案件では、日本で発生した検品などの費用を輸出側で負担することになりました。

不良品を無償で補充してもらっても、品質問題によって発生したコストがゼロになるわけではありません。

「工場価格」と「調達コスト」は同じではない

中国のサプライチェーンには、価格面で大きな競争力があります。

商品や条件によっては、日本国内で調達するより大幅に低い製造価格が提示されることもあります。

だから、中国からの調達そのものを否定する必要はありません。

問題は、何と何を比較するかです。

たとえば、

「現在の仕入価格が100、中国工場の見積が80」

という比較だけでは、仕入先を変更した後の実際のコストまでは分かりません。

海外から商品を調達する場合、工場価格以外にも、

  • 仕様の確認
  • サンプルの作成・評価
  • 品質管理・検品
  • 国際物流・輸入
  • 不具合発生時の対応
  • サプライヤーとの調整
  • それらを管理する時間

などが必要になります。

もちろん、すべての取引で問題が発生するわけではありません。

それでも、仕入先を比較するときに本当に見たいのは、

「日本で100円、中国で80円」という価格差だけではなく、現在の調達体制と、新しい調達体制の総コストの差

ではないでしょうか。

Quotation 工場価格
仕様確認
品質管理
サンプル・検品
国際物流・輸入
不具合対応
管理時間
Total cost 実際の
調達コスト

「サンプルOK」でも、量産OKとは限らない

別の案件では、日本側から仕様書と現物サンプルを受け取り、中国工場で試作品を作りました。

中国工場から届いたサンプルも確認し、その後、量産に進みました。

一見すると、必要な確認は行われています。

ところが、量産品が日本に到着すると、日本側が求めていたものとの差があり、実際の用途には使用できませんでした。

中国工場には、

「事前にサンプルを提出し、確認してもらっている」

という認識があります。

日本側には、

「仕様書と現物サンプルを渡している。実際に使えないものは受け入れられない」

という認識があります。

最終的には、中国工場が製品代を負担し、輸出側が国際輸送費を負担し、日本側にも輸入時の税金や日本国内での廃棄費用が残りました。

誰か一社だけが得をしたわけではありません。

三者それぞれに損失が残りました。

この経験から感じたのは、海外調達で難しいのは「話していないこと」だけではない、ということです。

双方が、

「確認した」

「理解した」

と思っていても、

「何をもって合格とするのか」まで同じ認識になっているとは限りません。

仕様書がある。

サンプルも確認した。

それでも、量産時の判断基準まで共有できているとは限りません。

価格交渉より前に、こうした認識の差をどこまで減らせるか。

それも調達の重要な仕事だと考えています。

では、15~20%高い工場を選ぶ意味はあるのか

現在取引している中国の包装資材工場の中に、他社より15~20%ほど価格が高い工場があります。

価格だけを見れば、最安ではありません。

それでも継続して相談している理由があります。

この工場は、受け取ったデザインデータをそのまま製造工程に流すのではなく、疑問があれば生産前に確認してきます。

たとえば、包装デザインについて、白インクの使い方や光沢・マット部分の表現など、実際に印刷したときの仕上がりに影響する点です。

日本側のデザイナーはデザインの専門家ですが、中国の印刷工場の生産条件まですべて把握しているとは限りません。

一方、工場は実際の製造工程を知っています。

そのため、

データを受け取る。

問題や疑問を見つける。

確認する。

必要であれば修正する。

そのうえで量産する。

という工程が入ります。

確認作業そのものは増えます。

しかし、量産してから問題を発見することに比べれば、負担ははるかに小さくなります。

Supplier review

価格差の中に、何が含まれているか

比較するのは価格の高低ではなく、量産前に問題や疑問を発見し、確認できる進め方です。

確認が後工程になる進め方

  1. データ受領
  2. そのまま量産
  3. 量産後に問題が発覚する可能性

問題発見を量産前に組み込む進め方

  1. データ受領
  2. 問題・疑問を発見
  3. 確認
  4. 必要に応じて修正
  5. 量産

価格差を見るときは、「製品そのもの」だけでなく、量産前にどこまで問題を発見・確認できるかも確認したいポイントです。

だから私は今、

良い工場とは、何でも「できます」と答える工場ではなく、必要なときに「このまま作って大丈夫ですか」と止めてくれる工場なのかもしれない

と考えています。

もちろん、価格が15~20%高ければ、その工場が必ず優れているという意味ではありません。

反対に、価格が安いから品質が悪いという意味でもありません。

見るべきなのは、

その価格差の中に、何が含まれているのか。

ということです。

中国工場から直接買ったほうがよい会社もある

ここまで読むと、

「では、中国工場との直接取引は避けたほうがよいのか」

と思われるかもしれません。

私はそうは考えていません。

たとえば、

  • 対象製品をよく理解している担当者が社内にいる
  • 品質上のリスクポイントを把握している
  • 仕様や検収基準を明確にできる
  • 輸入に関する基本的な知識がある
  • 工場と必要なコミュニケーションを取れる
  • 問題発生時にも自社で対応できる

こうした条件がそろっている企業であれば、中国工場との直接取引は十分合理的な選択肢です。

場合によっては、中間事業者を入れないほうが、シンプルでコストも低くなります。

中間事業者が入ること自体に価値があるわけではありません。

見るべきなのは、

その事業者が入ることで、自社の確認作業、管理負担、リスク、問題発生時の対応負担がどこまで減るのか。

そこに具体的な価値がなければ、単純に中間コストが増えただけになってしまいます。

中国調達を始める前に、まず「なぜ中国なのか」を考える

私自身、中国調達を始めた頃は、まず価格を見ていました。

現在、新しい調達案件を検討するときは、その前に確認したいことがあります。

どのような仕様が必要なのか。

日本で現在使用している同等品や現物サンプルがあるのか。

現在の購入価格と目標価格はいくらなのか。

特別な品質要求はあるのか。

そして、

現在の調達では、何ができていないのか。

価格なのか。

最低ロットなのか。

製造できる仕様なのか。

納期なのか。

まずそこを明確にします。

日本で現在、価格も品質も納期も安定して調達できているのであれば、単に「中国なら安そうだから」という理由だけで仕入先を変更する必要はないかもしれません。

また、求める品質と目標価格が現実的に両立しない場合には、中国での調達そのものを見送ったほうがよいケースもあります。

中国から買うこと自体が目的ではありません。

中国のサプライチェーンを利用することで、現在の調達課題を本当に改善できるのか。

その判断が先だと考えています。

「安く買う」より、「成立する調達」を考える

株式会社康程優創では、中国調達のご相談をいただいた際、最初から「中国なら安くできます」という前提では考えていません。

まず、

現在どのような調達をしているのか。

何に困っているのか。

どのような仕様が必要なのか。

その条件を中国の生産現場で安定して実現できるのか。

というところから整理します。

現在は、オンライン上でも中国の工場を探すこと自体は以前より容易になりました。

しかし、

工場が要求を本当に理解しているのか。

サンプルだけでなく量産でも再現できるのか。

問題が起きたとき、誰がどこまで対応するのか。

そこまで確認して、初めて一つの調達が成立します。

中国からの調達を6年以上経験する中で、私自身の考え方も変わりました。

以前は「いくらで作れるか」を先に見ていました。

今は、

調達とは、「できます」と言う工場を探すことではなく、本当にできるのかを一つずつ確認していく仕事だ

と考えています。

中国からの調達や仕入先の切り替えを検討しているものの、

「本当に中国で作る意味があるのか」

「工場価格以外に、何を確認すればよいのか」

という段階で迷われている場合もあります。

康程優創では、最初から中国調達を前提にするのではなく、現在の調達条件や課題を整理したうえで、中国のサプライチェーンを利用する意味があるかどうかから一緒に考えます。

まずは現在の調達状況について、お聞かせください。