中国から食品原料を調達する際、最初に確認する資料として、製品規格書や試験成績書を思い浮かべる方も少なくないでしょう。

有効成分の含有量、微生物、重金属、pH、粒度、かさ密度などが基準を満たしていれば、サンプル評価を経て正式発注へ進む。一見すると、特に問題のない流れに見えます。

しかし、食品原料の輸入可否は、最終製品の規格だけでは判断できない場合があります。

その原料が「何を使い、どのように製造されたのか」まで確認しなければ、日本への輸入段階で問題が判明する可能性があります。

規格書だけでは分からないことがある

製品規格書に記載されるのは、一般的に完成した原料の品質基準です。

一方、規格書だけでは、製造工程の途中で使用された次のような情報まで確認できない場合があります。

  • 原料や副原料の正確な名称と組成
  • 添加物や加工助剤の使用目的
  • 抽出・精製工程で使用する溶媒
  • 分離・ろ過工程で使用する材料
  • 各物質の除去工程
  • 最終製品に残留する可能性と管理方法

厚生労働省も、食品等の輸入手続において、必要に応じて「原材料及び製造工程に関する説明書」や試験成績書などを準備するよう示しています。検疫所は、生産国、製造者、原材料、添加物の使用、製造方法などをもとに、食品衛生法への適合性と検査の要否を審査します。厚生労働省「食品等輸入手続について」

つまり、完成品の数値が規格内であることと、その製造工程が日本の規制に適合していることは、別々に確認しなければなりません。

サンプル評価後に判明した製造工程上の問題

以下は、株式会社康程優創が受託して完了した顧客事例ではありません。食品原料の輸入実務に携わる中で得た経験をもとに、関係者を特定できない形で整理した匿名事例分析です。

対象は、健康食品分野で注目されている新しい食品原料でした。

中国側から提示された製品規格書には、有効成分、微生物、重金属、物性などの基準が記載されていました。サンプルを使った日本国内での試作も完了し、正式発注に向けて準備を進めていた段階です。

ところが、製造工程と使用原料を一つずつ確認したところ、製造途中で使用される副原料の一つについて、日本で予定していた用途では使用できない可能性が判明しました。

中国では使用できる物質であっても、日本で同じ条件のまま使用できるとは限りません。厚生労働省は、食品添加物について、原則として指定を受けたものを、定められた規格や使用基準に従って使用する制度を採っています。厚生労働省「食品添加物」

このまま資料の表現だけを修正し、従来の製造方法で量産することはできません。文書と実際の製造工程が一致していなければ、問題を解決したことにはならないからです。

中国の食品原料製造工程をオンラインで確認する担当者のイメージ
規格書の確認に加え、原材料の使用目的と実際の製造工程を技術担当者と確認します。

まず「なぜ使用しているのか」を確認する

副原料を単純に削除すれば、製品の性質が変わる可能性があります。

そこで最初に中国側の技術担当者へ確認したのは、その副原料を使用する技術的な目的でした。

流動性の調整、成分の安定化、製造効率の向上など、使用目的が分からなければ適切な代替候補を選べません。

目的を確認したうえで、日本で使用可能な候補を調査し、中国側の研究開発担当者へ提示しました。工場では候補物質の採用可否と配合範囲を検討し、小規模な試作を実施しました。

改善後の原料については、従来のサンプルと同じ条件で使用できるよう、主に次の点を確認しました。

  • 有効成分の含有量
  • pH
  • 粒度
  • かさ密度などの物性
  • 微生物および重金属等の基礎的な品質項目

食品原料の場合、法令上輸入できるだけでは十分ではありません。日本のOEM工場において、既存の充填条件や配合設計を変更せずに使用できるかという「生産適性」も重要です。

「残留しない」は説明ではなく結論

輸入前の資料確認では、加工助剤、溶媒、精製材料などについて、「最終製品には残留しない」と説明されることがあります。

しかし、この一文だけでは十分な根拠になりません。

確認すべきなのは、次のような内容です。

  1. どの工程で使用するのか
  2. どのような原理で除去されるのか
  3. どの工程で残留を管理するのか
  4. どの検査方法と管理基準を採用しているのか
  5. その結論について誰が責任を持つのか

理論的な除去工程を説明できる場合もあれば、第三者機関などによる残留検査が必要になる場合もあります。

「完全にゼロ」と断定するのではなく、検査方法、検出限界、管理値など、客観的に説明できる証拠を整えることが重要です。

検疫所への相談前に、輸入者自身が確認する

検疫所では「輸入食品事前相談」を受け付けています。

ただし、事前相談は、工場から受け取った資料をそのまま提出し、検疫所にすべてを判断してもらう制度ではありません。

名古屋検疫所の案内でも、最初に製造者から原材料や製造加工方法に関する資料を入手し、相談者である輸入者自身が安全性を確認したうえで、不明点を具体的に整理して相談する流れが示されています。名古屋検疫所「輸入食品事前相談」

また、新潟検疫所は、現地製造者が作成した原材料表と製造工程表を入手し、原材料、添加物の正確な名称や組成、原料から製品に至る工程を確認するよう案内しています。新潟検疫所「食品等の輸入事前相談」

今回の匿名事例では、改善後の原材料情報、製造工程、品質確認資料を整理し、日本語化したうえで事前相談を行いました。

担当者との複数回の確認を経て、必要な検査項目や資料上の補足事項を整理しました。その後、小規模な試験輸入と正式な輸入へ進み、あるケースでは、日本のOEM工場でも従来の生産条件を大きく変更することなく使用できました。

なお、事前相談の回答は、実際の輸入届出時における審査や検査結果を保証するものではありません。正式輸入時には、提出された届出書と関係資料に基づき、検疫所が改めて審査と検査要否の判断を行います。

中日間で食品原料の技術資料と製造工程を確認するイメージ
中国側の技術情報を整理し、日本の規制とOEM生産条件の両面から確認します。

日本のOEM企業が調達前に確認すべき流れ

中国産食品原料を初めて採用する場合は、少なくとも次の順序で進めることが望ましいと考えます。

1.用途を明確にする

同じ物質でも、食品の種類、使用目的、使用量などによって確認事項が異なります。

2.製造者発行の資料を取得する

製品規格書だけでなく、原材料一覧、添加物や加工助剤、製造工程、必要な品質管理情報を取得します。

3.日本の規制と照合する

使用される物質が日本で認められているか、使用基準や成分規格に適合するかを、実際の用途に基づいて確認します。

4.残留と除去工程を確認する

溶媒や加工助剤などについて、工場から理論的な説明、QC管理方法、検査結果または声明書を取得します。

5.OEM生産への適合性を確認する

粒度、かさ密度、溶解性など、最終製品の製造条件に影響する物性を確認します。

6.不明点を整理して事前相談する

輸入者自身による確認を済ませたうえで、届出予定または最寄りの検疫所へ相談します。

7.必要に応じて試験輸入・自主検査を行う

検疫所から示された確認事項や検査項目を踏まえ、小規模な輸入で実際の手続と品質を確認します。

中国工場と日本側の役割を分ける

中国の原料工場には、使用した原材料、添加物、加工助剤、溶媒および製造工程について、事実に基づく完全な情報を提供してもらう必要があります。

一方、日本の輸入者には、その情報をもとに日本の規制への適合性を確認し、安全性を確保する役割があります。厚生労働省のガイドラインでも、輸入者が製造者に対し、原材料、添加物、製造・加工基準などを確認する考え方が示されています。厚生労働省「輸入加工食品の自主管理に関する指針」

日本のOEM工場が自ら輸入者となる場合も、「工場が合格と言っている」「他国では販売されている」という説明だけで判断するのは危険です。

必要なのは、中国工場の技術担当者と正確に意思疎通しながら、製造工程を理解し、日本の制度と実際のOEM生産条件の両方から確認することです。

まとめ

中国産食品原料の調達では、価格や機能性を検討する前に、その原料が日本で適法に輸入でき、OEM工場で安定して使用できるかを確認する必要があります。

規格書は重要ですが、それだけですべてを判断することはできません。

原材料、添加物、加工助剤、製造工程、残留管理、品質検査まで確認し、書類と実際の製造内容を一致させる。それを正式発注の前に行うことは、サンプル評価後の手戻りや、輸入時の廃棄・積戻しに至るリスクを抑えることにつながります。

原料調達の最初の一歩は、価格交渉ではありません。

「この原料は、どのように作られているのか」を正確に理解することから始まります。

康程優創について

康程優創では、中国産食品原料の日本市場導入を検討する企業に対し、製造者からの情報収集、原材料・製造工程の整理、日本側で確認すべき事項の洗い出し、中国側技術担当者とのコミュニケーション支援を行っています。

法令上の最終判断や行政手続を代行するものではなく、必要に応じて検疫所や関係専門家と連携しながら、実際の輸入と事業化に向けた準備を支援します。

参考資料

関連記事

中国産食品原料・OEMについて

製造者からの情報収集、原材料・製造工程の整理、中国側技術担当者とのコミュニケーションなど、現在整理できている範囲からご相談いただけます。

食品原料・OEMについて相談する